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藤沢周平さんの懐かしい風景描写

私が藤沢周平さんと出会ったのは、藤沢周平原作の「三屋清左衛門残日録」を定年のお祝いとして先輩から戴いたことに始まります。
藩主の側用人という要職を辞して隠居をした主人公が、下世話な頼まれ事や事件に巻き込まれてそれなりに充実した日々を送ります。
この小説を読んでいっぺんに藤沢周平作品が気に入りました。

藤沢周平さんの作品は平易な文体で読みやすく、風景描写が実に美しいと思います。
藤沢周平さんの描く風景には子供の頃の田舎の田んぼや山や川の風景が重なります。こ
れは藤沢周平さんが子供の頃の山形県の庄内地方の風景から感じた描写なのかもしれませんが懐かしい風景を読んだ人は等しく感じているのでしょう。

藤沢周平さんの風景描写は若いときの闘病生活の間にたしなんだ俳句の影響があるのかもわかりません。
さらに藤沢周平作品は肩ひじ張らずにいつでもどこでも読めます。
出張の新幹線の車内でもちょっと広げて読めます。2,3ページ読んでシオリを挟んでまた読みつぎます。
私には藤沢周平作品のランキングはつけられません。全てが何回も読み返したい作品です。

藤沢周平さんの作品には友情があります。

藤沢周平さんの作品は大きく分けると二つに分けられます。一つは江戸下町の町人もの。
もう一つが架空の藩「海坂藩」を舞台にした武家もの。
もう一つの分け方をしますと、歴史小説が別に加わります。

ジャンルは色々に分けられますがどの作品にも登場する人物は魅力的な人物ばかりです。
下町の町人の暮らしぶりや夫婦のあり方。下級武士でも人間としての姿勢のよさ。
私のような人付き合いが苦手で引きこもり勝ちの人間でも藤沢周平さんの描く人物となら付き合って見たいと思わせます。

藤沢周平さんの描く下級武士の主人公は友情を大切にします。代表作となった「蝉しぐれ」や「風の果て」は友情が物語の
底辺にずっと流れています。
さらに江戸の浪人者とも言える「用心棒日月抄」シリーズや「よろずや平四郎活人剣」シリーズも友情の物語だと思います。

そして藤沢周平さんの描く人物は無名でどこにでも居そうな人物ばかりです。
そういう無名の人物が与えられた場所で懸命に、または淡々と生きていく姿が中高年には自分が生きてきた部分と重なるのです。

食べてみたい海坂藩の食べ物

藤沢周平さんの作品の特徴としては、まず自然描写の美しさ、海坂藩の食べ物のうまさ、剣の使い方の臨場感、
女性の強さと美しさ、友情、ユーモア等など・・

藤沢周平さんの作品によくでる食べ物があります。
これが藤沢周平さんの手にかかると大変おいしい料理になります。
海坂藩の食べ物は山形県の庄内地方の食べ物です。
それは藤沢周平さんが生涯愛した生まれ故郷、庄内地方の追憶の味なのかもわかりません。
「凶刃」に出てくるカラゲ、や醤油の実、「三屋清左衛門残日録」では小料理屋涌井で度々出てくる民田茄子の
漬物、赤蕪、筍汁、どんがら汁、クチボソ、風呂吹き大根、小鯛の塩焼きもうまそう・・

藤沢周平さんは故郷庄内に大変な愛着を持っていました。
それは故郷の中学校に教師として奉職しながら、わずか1年半で肺結核のため東京での隔離療養の生活を余儀
なくされたことと関係があるのかもしれません。
当時の肺結核は不治の病とされ伝染の恐怖で隔離病舎に入ったようです。
たしか同年齢の俳優渥美清さんも肺結核で同じ頃に入院生活をしています。
藤沢周平さんの直木賞受賞までの半生は人に言えない苦しみや苦労が続いたようです。それが作品の前期には
にじんでいます。

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